- M&Aコラム
- 2026.02.09
企業分析力とは「過去・現在・未来」を読む力
― 大谷翔平選手とロサンゼルス・ドジャースの契約から考えるM&Aの本質 ―
2023年、大谷翔平選手は、ロサンゼルス・ドジャースと
10年総額7億ドル(約1,000億円)という、米野球史上最高額の契約を結びました。
この金額は、単なる「成績への対価」ではありません。
大谷選手の人柄、これまで積み重ねてきた圧倒的な実績、
ファンや関係者に与えてきた感動と信頼、
そして何より、これから生まれるであろう未来の物語と成長の可能性――
それらすべてを踏まえたうえで、組織として下された「意思決定」でした。
さらに注目すべきは、その契約内容です。
大谷選手は、ドジャースが強く魅力的なチームであり続けられるよう、
報酬の大半を後払いで受け取ることに合意しました。
・2033年まで:毎年200万ドル
・残り約6億8,000万ドル:2034年以降〜2043年に受領
これは、自身の報酬よりもチームの持続的な競争力を優先した、
極めて「経営的」であり、「貢献的」な判断と言えるでしょう。
大谷翔平選手の加入によって生まれた結果、そしてこれから広がっていく可能性の素晴らしさは、
私以上に、すでに多くの皆様が実感されているところだと思います。
M&Aにおける企業価値も、実は同じ
M&Aの世界において、
企業も人と同じく、唯一無二の存在であり、生き物です。
その企業が「いくらで評価されるか」は、
単に数字だけで決まるものではありません。
一般論として、
時価純資産+EBITDAの3〜5倍
という算定方法は確かに存在します。
これは、
・買い手にとっての投資回収の目安
・売り手にとっての分かりやすさ
という点では、有効な“共通言語”です。
しかし、その企業が生み出す未来の可能性は、
「どの買い手が、その価値をどう活かせるか」によって、
大きく変わります。
実際の事例として、私たちは、
財務数値だけでは測れない事業の本質や将来性、
買い手とのシナジーを丁寧に整理・言語化することで、
決算書から算出したEBITDAの約77倍という評価で成約に至ったケースも経験しています。
これは特別な魔法ではなく、
企業の価値を正しく分析し、適切な相手に伝えた結果に過ぎません。
企業分析力=未来価値を翻訳する力
売り手企業様には、
・自社が持つ強み
・これまで積み重ねてきた歴史
・これから広がる可能性
を、言語化し、物語として説明できる力が求められます。
一方、買い手企業様には、
・説明の中にある「再現性のある要素」
・自社で活かせる部分と、難易度の高い部分
・両社が組み合わさることで生まれるシナジー
を冷静に見極め、評価する企業分析力が不可欠です。
M&Aは「価格交渉」ではなく「価値の共創」
大谷翔平選手とドジャースの契約が示しているのは、
「高い金額=リスク」ではなく、
価値を正しく理解し、未来を信じて投資することの重要性です。
M&Aも同様に、
・売り手が自社の価値を正しく伝え
・買い手がその価値を活かす覚悟を持つ
そのとき初めて、
価格を超えた、意味のあるM&Aが実現します。
私たちは、
単なる数値の分析にとどまらず、
企業の本質と未来価値を見抜く企業分析力、
そしてビジネスデューデリジェンスを通じて、
双方の「心から納得できるM&A」を支援してまいります。
最後になりますが、
社会の皆様一人ひとりが、企業を「数字」だけでなく「可能性ある存在」として捉え、
自社とのシナジーを考えた評価ができるよう、
M&Aリテラシーと企業分析力を高めていただければ幸いです。